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日本と香港の国境を超えて、インタラクティブな交流から生まれるプロダクト。〜株式会社ユニオン/Oft Interiors〜

日本のものづくり企業7社が出揃う、「DESIGN INSPIRE」が、2024年12月5〜7日に香港コンベンション&エキシビションセンターで開催される。ジャパン企業ブースに出展する各社は、香港デザイナーと出展企業とのプロダクトコラボレーションを行った。当日会場ではそれらが展示される。

株式会社ユニオン(以降、ユニオン)が香港のデザイン会社であるOft Interiorsの共同代表・CM,Jao(CM,ジャオ)氏と取り組んだのは、「これまでにないドアハンドル」。これまでにも密にやりとりしながら制作を進めてきたが、2024年11月に来日して、デザインプロトタイプの確認を行った。ジャオ氏とユニオンの代表取締役・立野純三氏にその思いについて伺った。

CM,ジャオ氏

●CM,Jao(CM,ジャオ)/Oft Interiors Ltd

2013年、Ken Cheungと共同でOft Interiors Ltdを設立。映画館や小売店など、オーダーメイドの商業空間を数多く手がけるデザインスタジオ。チームのインスピレーションを最大限に生かしながら、建築をする上で、日常の環境に残されているものを拾い上げることにこだわっている。クライアントの実際のニーズや思いに応えることこそが、クライアントからの信頼とともに、この業界で成功するためのドグマであると考えている。

https://www.oftinteriors.com/

●株式会社ユニオン

ドアハンドル、レバーハンドルをメインとする、建築金物を取り扱う専門商社。製品全てを「アートウエア」と捉え、国内のドアハンドルのシェアでは、90%以上で業界随一の実績を誇っています。

https://www.artunion.co.jp/

「これまでにないデザイン」が生まれる過程

日本のドアハンドルメーカーと香港のデザイン会社が目指したのは、有機的なデザイン。「今までに見たことのないものを作ろう」という意気込みのなか、両社は互いにデザインイメージのキャッチボールをしながら、トライアンドエラーを繰り返し作り上げていった。

最初にジャオ氏が考えたのは、金属の滑らかさを表現できないかというアイデアだった。そう、ねり飴を引き延ばした時のような状態がそれだ。ジャオ氏がアイデアを具体的なデザインに施してデータ化し、そのデータを受け取ったユニオンが3Dプリンターで金属型にして郵送。その後、オンラインや対面でのミーティングを経ながら、プロトタイプの試作交換を繰り返して、素材が決定され、プロトタイプは完成に向かった。

ジャオ氏がイメージしたアイデアデータ

 

ユニオンは3Dデータでさまざまな検証を行った

日本企業とのコラボレーションは初めてだという、ジャオ氏に話を聞いてみた。「文化は違えど、デザインを追求する姿勢は共通していると感じます。私たちはビジョンを共有することで一致しています。私が表現したいコンセプトのひとつは、素材間の緊張感です。それは、Oft Interiorsとユニオンの関係にも似ていて、私たちのコラボレーションは主にオンラインで行われましたが、それでも私たちをつなぐ強い緊張感がありました」。この初めてのチャレンジについて、前向きな手応えを感じていたようだ。

プロトタイプが完成に向かうなか、その様子を興味深く見つめているひとりの人物がいた。それは今回のプロジェクトに期待を込めているユニオンの代表取締役・立野純三氏だ。ユニオンの名前が世間に知られる機会となったのが、東京オリンピック(1940年)と大阪万博(1975年)。そこで活躍された建築家たちに、製品がたくさん使われたことでユニオンのブランドは建築業界に浸透したと立野氏は話す。2025年に開催される大阪万博についても「今度は海外の若手デザイナーと協働することによって、海外においてもユニオンブランドを浸透させたい」と意気込んでいる。

左が立野純三氏。立野氏は香港のOFT INTERIORのオフィス訪問もした

さらに今回のコラボレーションへの期待感についてこう続ける。「建材業界は2025年の大阪万博もあって、今は売上の好調なところが多いようですが、万博・IRの後には減少傾向に向かうと考えています。そういった中で、国内市場だけではなく、グローバルな展開に成功した企業だけが発展をしていくでしょう。しかし、海外展開は非常に課題の多い取り組みです。一社一社だと難しい側面も多いでしょうから、今回のDESIGN INSPIREのように、アライアンスのような団体を組んでチームで海外に出て行くことは、とても有意義な取り組みです。私たちが持っている技術を世界で活かすいい機会だと期待しています」

これからの時代を担う、インタラクティブなものづくり

改めて、ものづくりという面から見ると、今回のコラボレーションはどうだろうか。オーダーされたものをただ作るという、一方通行の関係ではなく、オンラインを活用しながらの意見交換が積極的に行われていた。もう国境を越えてインタラクティブに意思疎通をしながら、ものづくりができる時代が来ているのだ。

日本のものづくりを、そして世界のデザインを未来につなげていくにはどうすべきなのか?それについて立野氏は、「日本のものづくりを未来につなげていくには、職人の待遇を向上させる必要があります。世界に誇る日本のものづくりをデザインと融合させ、その仕事に見合った適切な報酬が、職人に入ってくるような仕組みづくりが課題だと思います。ユニオンは建築材料に日本の伝統的なものづくりの手法を採用することにより、ものづくり産業の振興に寄与したいと考えています」と述べた。

それを受けてジャオ氏は、「日本と香港、どちらにもそれぞれ魅力的な文化や特徴があります。デザインはコミュニケーションによって表現されるものだと思うので、今後もデザイン業界同士の交流やコラボレーションが増えることを願っています」と語った。

日本のものづくりは海外からの評価も高い。利益を生み出すシステムが構築できれば、伝統産業も復活し、継続的な発展につながっていくかもしれない。日本と香港の新しい可能性を探る絶好の機会となる、DESIGN INSPIRE。当日は製品を前に、どのような交流が育まれながら生まれたのか、過程を想像しながら臨むと楽しめそうだ。

開催概要

DESIGN INSPIRE
開催日時: 2024 年 12 月 5 日〜7 日
開催場所: 香港コンベンション&エキシビションセンター
主催: 香港貿易発展局
協力: (一社)日本建築材料協会近畿経済産業局
公式サイト:https://designinspire.hktdc.com/

小倉ちあき
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