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香港のデザイナーデニス・チュン氏が工場視察。2024年の「DESIGN INSPIRE」で実現する、香港と日本のプロダクトコラボ開発

日本のものづくり企業と香港のデザイナーのコラボレーション

開催が2024年12月5〜7日と迫っている「DESIGN INSPIRE」。ジャパン企業ブースでは、着々と準備が進められています。今年の目玉は、香港デザイナーと出展企業とのプロダクトコラボレーション企画。展示会の当日に、各企業が香港デザイナーと共同開発したプロトタイプが発表される予定です。

この度、香港でクリエイティブデザイナーとして活躍するデニス・チュン氏が、10月上旬に来日。出展企業である株式会社平田タイル中井産業株式会社のそれぞれの工場を訪問し、製作過程を共有。日本のものづくりへの想いや気づきについて、お話を伺いました。

●デニス・チュン氏/Studio RYTE
建築やインテリア、家具などを活用してブランディングやプロジェクトに必要なサービスを提供するデザインオフィス。デニス・チュン氏がこだわっているのはデザインと環境負荷への取り組み。クライアントと協力して、美しいクリエイティビティを維持しながら、環境に配慮したデザインを目指しています。
https://studio-ryte.com/en/

施釉磁器モザイクタイル発祥の地、岐阜県多治見市へ。

岐阜県多治見市は、施釉磁器モザイクタイル発祥の地であり、全国一のタイル生産量を誇るエリアでもあります。モザイクタイルに至っては、国内生産量の9割を多治見市が占めています。そんな「タイルの聖地」とも言える場所に工場を構える株式会社平田タイル。そのクリエイビティの高さに、デニス氏も感銘を受けたようです。

●株式会社平田タイル
タイルや住設機器を国内メーカーから仕入れて販売から施工まで総合的に行っています。自社ブランドの企画開発にも力を入れており、近年ではイタリアやフランスなどのヨーロッパを中心に、海外から輸入した個性豊かなタイルや水回り製品を提案しています。
http://www.hiratatile.co.jp/

岐阜県多治見市にある、平田タイル工場の印象はいかがでしたでしょうか?

デニスさん:  今回、平田タイルの多治見工場を訪問する機会に恵まれました。細部へのこだわりと施設の整然とした職場環境に本当に感銘を受けました。雰囲気から得た印象は、日本の職人技の特徴である精密さと献身的な姿勢です。モザイクタイルを手作業で選別する集中作業と、細心の注意を払って行われる様子を目の当たりにして、彼らの卓越性へのこだわりに畏敬の念を抱いています。

今回のコラボレーションではどのようなことが実現されそうでしょうか?

デニスさん:  まず平田タイルとのコラボレーションをする上で重要視しているのは、彼らのユニークなタイル製造技術と最先端かつ持続可能な技術への理解です。陶磁器(タイル)に関する、彼らの豊富な知識と専門知識を活用することは、さまざまなコラボレーションプロジェクトを大いに充実させるだけでなく、創造性を育みながらデザインの限界を押し広げることができると思います。彼らの専門技術を活用することで、市場で際立つ、並外れた独特の作品を生み出すことができるでしょう。

なるほどです。期待しています。ちなみに、日本と香港(中国)の製造業の違いは感じましたでしょうか?

デニスさん:  日本と香港の製造業の中で、私が感じた顕著な違いは、工場の規模と専門性だと感じました。日本の工場は、特定の専門知識に焦点を当てて、ニッチな分野でスキルを完璧に磨く傾向があります。対照的に香港(中国)の工場では多くの場合、ひとつの屋根の下でより幅広い取引とタスクを網羅し、さまざまな生産プロセスに対応しています。このアプローチの違いは、両地域の多様な産業環境を反映しており、それぞれに独自の利点と課題があると感じています。

紀州材の産地・和歌山にある本社工場へ。

続いて、やってきたのは和歌山県にある中井産業株式会社(以下、中井産業)の本社工場。国内の良質な天然木を扱う工場は、木のアロマが漂うオープンスペース。商品化するまでの全ての木材加工工程を、この場で行っています。オリジナルブランド「KITOTE」障子もここで製作されています。

●中井産業株式会社

紀州材の産地・和歌山にある総合木工メーカー。主に障子や扉などの木製建具に加え、神具も扱っています。職人の誇り高いクラフトマンシップを大切にしながらも手加工と機械加工の双方を研鑽しながら高品質な木材製品を世に届けています。https://www.nakaisangyo.co.jp/

中井産業株式会社の本社工場の印象はいかがでしたでしょうか?

デニスさん:  中井産業の工場での経験は、まさに感動的でした。職人が生み出す職人技は模範的で、技術に対する深い献身と完璧さへの揺るぎないこだわりを感じました。彼らの仕事に見られる細部へのこだわりのレベルは、まさに彼らの熟練度と専門知識の証。プロ職人として尊敬の念を抱きました。彼らが組子や障子を作る方法は、品質と職人技の高水準を確立していると感じました。

中井産業とのコラボレーションにおいて大切にしていることはどんなことでしょうか?

デニスさん:  伝統的な技術と異文化の視点の融合を重視して、オープンマインドなアプローチを採用することが不可欠だと感じました。彼らの伝統を理解して尊重すると同時に、海外からの新鮮な視点と革新的なアイデアを持ち込むことで、調和のとれた実りあるコラボレーションを実現できると思います。この伝統と現代性の融合により、世界中の人々の心に響く、真にユニークで文化的に豊かなデザインを生み出すことができると確信しています。

平田タイルと中井産業の両工場見学を含めて、コラボレーションプロジェクトを通して学んだことはどんなことでしょうか?

デニスさん:  私にとってコラボレーションプロジェクトは、日本の製造業の精神について貴重な洞察を提供してくれ、プロジェクト目標を達成するための揺るぎない信念と献身の重要性を再認識させてくれる機会となりました。厳しい時間枠内で日本と香港のさまざまな状況下に置かれるプロジェクトを展開することは、課題も伴いました。そのために効果的なコミュニケーション、綿密な計画、共通のビジョンの重要性も強調されました。この共同プロジェクトのキュレーターである盛世匡氏の協力により、地理的境界や文化の違いを超えて優れた成果を生み出すコラボレーションの力を実感しています。

最後に、「Design Inspire2024」への期待と熱意についてお聞かせください。

デニスさん:  私は、革新的なクロスオーバーを促進し、ビジネスの成長と創造的機会への新たな道を切り開くプラットフォームとして、Design Inspire を心待ちにしています。さまざまな国のデザイナー、特に香港のデザイナーとの共同事業の可能性は非常に刺激的です。このようなコラボレーションは、新鮮なアイデアを刺激するだけでなく、文化交流を促進する機会となり、デザイン業界を前進させる可能性を秘めていると信じています。このような交流から生まれる相乗効果と、このようなダイナミックなパートナーシップから生まれる刺激的な作品を目にすることを、私自身が楽しみにしています。

開催概要

DESIGN INSPIRE
開催日時: 2024 年 12 月 5 日〜7 日
開催場所: 香港コンベンション&エキシビションセンター
主催: 香港貿易発展局
協力: (一社)日本建築材料協会近畿経済産業局
公式サイト:https://designinspire.hktdc.com/

 

小倉ちあき
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