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2024年の「DESIGN INSPIRE」への期待感は?コラボレーターインタビュー

香港と世界をつなぐデザイン見本市

香港の貿易を促進、支援、発展させる機会として注目を集めているデザイン見本市「DESIGN INSPIRE」が2024年12月5日〜7日に、香港コンベンション&エキシビションセンターで開催される。コロナ禍期間中はオンライン開催となったが、4年ぶりのリアル開催として期待も高まっている。 主催は香港貿易発展局。日本からは一般社団法人日本建築材料協会が近畿経済産業局の協力のもと、ジャパンパビリオンとして出展。今年は、日本からは7社が参加予定で、当日のエキシビジョンでの発表に向けて、海外クリエイターとのプロダクト開発コラボレーション企画も同時進行で進められている。

香港に15年在住し、建築設計や香港クリエイターと日本の接点を作るコラボレーターとして活動する盛世匡さん(株式会社アルテ・アバン)。今回は日本ブースの設計とコラボレーターの役割を担っている。そんな盛さんに、「DESIGN INSPIRE」の今年の注目ポイントについて伺った。(インタビュアー:小倉ちあき)

―今年の「DESIGN INSPIRE」日本ブースの注目ポイントはどんなところでしょう?

盛さん:  大きな特徴は、香港クリエイターとのコラボレーション企画です。日本のものづくり企業は、高い技術を持っているにも関わらず、誰に対して売るのかが見えていないケースが多く見受けられます。日本のトレンドを追う形や企業の技術主導のプロダクトアウトだと、リアルなマーケットが捉えにくい……。せっかくの商品が内側に向いてしまい、届くべきお客さんに届かないのはもったいないです。

展示会でよくある既存商品の紹介や、カタログの新紹介発表にとどまらず、今年の「DESIGN INSPIRE」では、新しいマーケットの開発やマーケットインのための取り組みを促進したいと考えています。

―「DESIGN INSPIRE」は香港で開催されますが、香港のマーケットについてどう思われますか?

盛さん:  香港は中国の特別行政区で、一つの国(中国)の中で、2つの制度(社会主義と資本主義)が併存している状態が続いています。政治的な側面がありつつも、香港人デザイナーは中国企業の仕事案件を受けていることがほとんど。マカオや中国本土などですね。中国の建築設計や都市開発案件は商業範囲が大きく、先進性を理解しながら取り組んでいる方が多いのも事実です。

―世界的なアートフェア「アート・バーゼル」も香港で開催されていますよね。そのくらい香港は商業的にも世界のハブであり、世界中の商業が交差する場所だといえますね。

盛さん:  その香港で日本のものづくりをマーケットインしていくのは、大きなチャンスだと考えていいのではないでしょうか。香港が市場に入るということは中国も市場に入るということです。工藝品やアート作品とは少し異なり、建材は機能材なので、その機能性がマーケットに合っている必要があります。

その点でも、海外のデザイナーと組んで共同開発することでその問題は解消されるでしょう。その国で働き暮らし、同じ文化圏にいるクリエイターとコラボレーションすることで、土地の利を得ることができ、商品開発においても最大の効果が得られると考えています。

また、ものづくりの精神性が日本には宿っていることを香港のクリエイターは知り、尊敬しています。先出ししたように香港人のものづくりの対象は中国大陸。合理的なものづくりがはびこる中で、ものに対して即物的にしか見ていないことがあります。彼らに知ってほしいのは、日本との共同開発を通して、その背景にあるものづくりへの真剣さやこだわりです。近年の若いクリエイターは、それに気づき、きちんとしたものづくりをしたいという意識も芽生えています。

―共同開発は、新しい視野を広げるだけでなく、日本のものづくりの心を伝えることにも繋がりそうですね。

盛さん:  はい。日本と香港の双方にとって、相乗効果が生まれることを期待します。デザインはあくまでも技術的や美観的なものだけではない。創造的な行為だということを強く感じてもらいたいですね。

各国にどんな事情があっても、いい人材や企業が活躍できる場が増えることは社会全体にとっていいことです。新しいネットワークが生まれれば、商品性も上がるかもしれないですし、これまでにない商品が生まれる可能性もあります。個人的にも、日本のものづくりや工藝に深い関心があります。共同開発のスキームをつくって、「DESIGN INSPIRE」後も継続して取り組んでいきたいと考えています。

 

―「DESIGN INSPIRE」のブース設計も担当されますが、どのような空間になりそうでしょうか?

盛さん:  テーマは「モダンジャパニーズ」です。開放感があり、空間の透明性や軽やかさを出しつつ、視覚的なつながりが維持できるような演出をする予定です。日本の伝統的なすだれや障子のように、外から見た時に“垣間見る”行為を触発したい。その向こうにある空間の移ろいを想像したり、仕草や所作を感じることで壁の向こうに何があるんだろう?と気にならせるような仕掛けを施す予定です。

商談やトークショーも行えるようなラウンジ空間も用意します。イベント会場全体は、多国籍な人が出入りします。商品のアピールだけではなく、日本企業がより魅力的に映り、よい交流が生まれやすい場作りを行う予定です。ご期待ください。

―最後に「DESIGN INSPIRE」に参加される日本企業にメッセージをお願いします。

盛さん:  海外クリエイターとの協業を通して中国や世界の視点を得られることで、フィールドが一気に広がるでしょう。また逆に才能のある香港のクリエイターにとっても中国だけに依存せず、日本というフィールドへ広げられることはチャンスでもあるのです。互いにウィンウィンの関係を構築できる絶好の機会です。

自国で生まれた商品が、新しい価値観や技術を持っている海外企業に、新しい形で生かされる可能性もあるでしょう。相互の価値が交換される、これが今回の「DESIGN INSPIRE」の意義のひとつかもしれません。

 

開催概要

DESIGN INSPIRE
開催日時: 2024 年 12 月 5 日〜7 日
開催場所: 香港コンベンション&エキシビションセンター
主催: (一社)日本建築材料協会
協力: 近畿経済産業局
公式サイト:
https://designinspire.hktdc.com/

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