TEKTON

東大阪の職人技が生きる、
オンリーワンの灯り

日本の金箔だからこそ、日本のものづくりだからこそ。

GOLDBLU Lamp / 八紘電機株式会社

ハイクオリティなホテルエントランスに吊られる象徴的なシャンデリアから、ベッドルームで柔らかく心を癒やしてくれるライトまで、空間の表情を大きく司る灯りの力。八紘電機株式会社の生み出す光は、世界にひとつ。建築の特性を活かしながら、空間をより魅力的に演出させる照明を生み出している。

個性豊かな灯りは、空間の表情を豊かに変える

1968年創業の八紘電機株式会社は、オーダーメイド専門の照明メーカー。空間のイメージを自由自在に操る、灯りのプロフェッショナルだ。依頼先の空間のイメージを解釈し、照明設計からデザイン、製造、納品までをワンストップで行っている。

八紘電機株式会社の大きな強みは、照明設計から携わるところ。設置される空間を把握した担当者が起こした設計図によって、細部のデザインチェックを、工場で製品を確認しながら微調整できる。「妥協した製品は、世に出したくない」と、デザインのみならず点灯確認・耐圧確認も徹底。イメージを形にし、世界にひとつだけの「価値ある照明」を創り出す。日本の中でも数少ない企業だろう。

細かい板金加工作業は、熟練の職人のなせる技

八紘電機株式会社があるのは、大阪府東大阪市。東大阪市といえば、大阪、いや、日本を代表するものづくりのまちだ。約6,000数を越える中小規模の町工場が集まり、多種多様な製品が生産されている。「東大阪なら、なんでも揃う」と、国内外からも高い評価を得ている所以は、専門分野に特化する町工場同士が、お互いに連携し、知恵を出し合ってネットワークを築いてきたから。これは、東大阪特有のものづくり文化である。そのため、規格外サイズの鏡面、特殊形状のパイプ、特殊塗装などオーダーメイドの照明に必要となるイレギュラーな部品が、協力会社から手に入りやすい環境となっている。「東大阪でなければ、私たちの照明作りはできない」と、八紘電機株式会社 専務取締役 淡野幸子さんは語る。

組み立て作業は、事務所の横で行われる。納期によっては、全社員で行うことも

組み立て工場で働く職人は、上は70代から下は20代まで。生み出す製品も、手のひらサイズの小型から高さ7mの巨大なものまで幅広い。「完成形のデザイン設計図を見て、まず頭の中で複数のパーツに分解して、そのパーツの組み合わせ方を試行錯誤します。経験がものをいう作業。日々パズルを解いているようなものですね」と職人歴46年の白山さんは、朗らかに笑う。

デザイン面においては、営業・職人・設計チームなどが、社内の垣根を越えて意見を出し合える環境。同じものはふたつとないものづくり。オーダーメイド製品を生み出すということは、問題解決の連続でもある。工場全体で、“作品”の完成に向けて、日々切磋琢磨を重ねている。

複雑な形状の板金パーツを組み合わせて、照明は完成する

自社プロダクトブランド「GOLDBLU Lamp」は、金箔の伝統技術を持ち合わせる株式会社ゴールデンバロールと八紘電機株式会社とのコラボレーションによる製品だ。これは、技術と技術の偶然の出会いから生まれた。きっかけは「デザインインスパイヤ香港2018」への出展をきっかけに、株式会社ゴールデンバロールと交流があったのだ。

金箔を照明にかざした時に、初めて見たその青緑色に、心が湧きました。
瞬間的に、これを商品化したい!と思いました。

「GOLDBLU Lamp」は、PHASE、LESS THAN 600、TINという、趣向の異なる3パターンで展開。なかでも「PHASE」は、手で回転させる度に、月の満ち欠けのように変化する。空間に置き、明かりをともせば、金箔と錫箔の合間から神秘的な青緑の光がこぼれ出る。暗闇のなかに浮かぶその球体は、宇宙にぽつりと浮かぶ地球のようでもある。金箔が吸収する青と緑色のみが人間の目に写る。錫箔や他の箔では起こらない、金箔のみにおこる現象なのだそう。

「GOLDBLU Lamp PHASE」

古くから日本では、金箔は貴重なものとして扱われてきた。金箔は海外でも多くの建材に使われているが、1/10000の薄さにできるのは日本がなせる職人技だ。1/10000の薄さでなければ光が透過せず、「GOLDBLU Lamp」の特徴であるあの青緑色は出せない。3/10000の薄さでも実現しないという難しさなのだ。

日本には世界にはない技術がある。八紘電機株式会社では、志を高く持ち、高い技術力のあるものづくりメーカーと共に、日本のものづくりを世界に発信したいと考えている。「近年、デザイン意識の高い海外の方が、日本の技術力や伝統に対して評価してくださっています。私たちには東大阪というものづくりのまちの強みと、オーダーメイド専門業者として50年以上培ってきた技術があります。世界に目を向けた製品づくりに、より一層取り組んでいきたいです」。オンリーワンの灯りが、海外の建築空間をどう演出するのか、期待が高まる。

ホテルエントランスを演出するオンリーワンの照明

WRITING
小倉 ちあき / 地域・アート・暮らしの領域で執筆。https://lit.link/kurumuruchiiii
PHOTOGRAPH
HAGA MOMO / 写真家。舞台に立つ人や工場で働く人々の生き様、自然の美しさに鋭く迫る。
DESIGN
山中 崇寛 / Chillout Creative Space
DIRECTION
宮本 尚幸 / 日本建築材料協会デザイン委員会
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