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イベントレポート | 香港のデザイン展示会「DESIGN INSPIRE2024」にて、「ジャパンパビリオン」が出展

6年ぶりのリアル開催となった「DESIGN INSPIRE」

デザイン展示会「DESIGN INSPIRE(デザイン・インスパイア)」が、2024年12月5日から7日、香港コンベンション&エキシビションセンターで開催された。「ジャパンパビリオン」として日本の技術とデザインをアピールするブースとして、日本の建材メーカー7社が合同出展。日本の伝統技術をベースにした建材やデザイン性の高い製品を、世界のバイヤーや企業、投資家などに広くアピールする機会とすることを目的に、日本建築材料協会と近畿経済産業局が協力して企画された。会期中の様子をレポートしていきたい。

香港というプラットホームで、6年ぶりの開催会場は、香港コンベンション&エキシビションセンターの3階フロア。DESIGN INSPIREの展示会場に一歩足を踏み入れると、デザインの解釈を広げた幅広いジャンルの出展者が超えて集結していた。中国・香港・フランスを中心に、デザインを軸に展開する企業や公的機関などがブースを構えており、建築デザインやプロダクト製品、工業デザイン、プログラミングデザイン、ジュエリーなど、扱う商材は多岐にわたっていた。


来場者としてさまざまな企業やバイヤー、団体、学生などが訪れ、会場は賑わっていた。デザイン系の大学もブース出展していたため、デザイン業界を志す学生などの若手層も多かった印象だ。各所でワークショップも積極的に行われていたため、一般客がデザインに触れる機会も多く設けられていた。



贅沢だったのは、フランスで開催されている世界最大級のインテリアとデザインの国際見本市「Maison&Object Paris(メゾン・エ・オブジェ パリ)」が、アジア初登場していたこと。「メゾン・エ・オブジェ パリ」は、世界三大インテリア見本市の一つでもあり、本場開催時には世界各国からさまざまなブランドやメーカー、そしてバイヤーが集まる。今回はミニマムなパッケージながらも、文化創造産業振興庁の後援の下、最新トレンドや職人技、革新的な体験を網羅した100のブランドとデザイン製品が展示されていた。

アジアの優れた持続可能なデザインや取り組みを世界に紹介するアワード「DFAアワード 2024」の紹介ブースも。会期中に別会場で「DFAアワード 2024」の受賞発表会も催されていた。香港デザインセンターによってローンチされた本アワードは、世界的にも知られているものだ。

2024年度は、ジャパンパビリオンにも出展している荒川技研工業が、創業50周年を記念して発行された本「50 GRIPS 特装版」においてコミュニケーションデザイン部門にて金賞を受賞。他にも日本人では、建築家の隈研吾氏や「G-SHOCK」の生みの親である伊部菊雄氏、NOSIGNERの太刀川英輔氏などが名を連ねていた。期間中を含む約1週間は、周辺拠点で連動イベントが開催されており、香港のまちを回遊し、デザインに触れられる機会が設けられていた。

イベントステージ「INO TALK」では、世界中のデザイナーや業界の専門家が活発な議論を繰り広げ、最新のデザイントレンドや開発について話し合う場が開かれた。「日本建材協会が推進する日本のものづくりと香港デザインのコラボレーション」と題して、今回のジャパンパビリオンの取り組みを紹介するトークイベントも実施。香港デザイナーと日本企業とのコラボレーション企画の内容と結果、そして今後の展望について話された。香港のデザイナーの目線を通して捉えた「日本のものづくり」を海外に向けて伝えられる機会となった。

「ジャパンパビリオン」ブースについて

「ジャパンパビリオン」ブースの紹介をしていきたい。ブースデザインを行なったのは、盛世匡氏(株式会社アルテ・アバン)だ。テーマは「モダンジャパニーズ」。ひとつのボックスのように、7つのブースは統一感を持ってまとめられ、正方形のブース全体は緩やかに仕切られながらも、どこからでも入ることができる動線で回遊しやすい状態が生まれていた。

ハイチェアーが置かれた余白スペースでは、抹茶ケータリングサービスが提供され、日本らしさが伝わる空間となっていた。ゲストと商談をしたり、コミュニケーションを取り合ったりする様子も見受けられた。また連日各社トークイベントも実施。コーディネーターの盛世匡氏が司会進行を務め、コラボレーション企画の背景やものづくりへの想いなど、来場者に向けてさまざまな紹介がなされた。



出展企業7社のブースを巡って、インタビューを実施した。DESIGN INSPIRE出展への思い、新作プロダクトについて、香港デザイナーとのコラボレーションについて、今後の展開への期待など、企業ごとにさまざまな話を伺うことができた。以下のリンクからそれぞれ確認してほしい。

「ジャパンパビリオン」ブース出展企業インタビューvol.1

 

「ジャパンパビリオン」ブース出展企業インタビューvol.2

 

デニス・チェン氏による、オフィス訪問企画も

イベント2日目の夜、出展企業と製品コラボレーションを行ったデザイナー・デニス・チャン氏(STUDIO RYTE代表)による催しもあった。閉場した会場から、バスをチャーターしてデニスのオフィスへ訪問。わいわいと盛り上がる車内は、まるで大人の遠足のよう。南側へ車で20分ほど、黄竹坑駅のエリアにオフィスはあった。面積に比較して、居住者が多い香港のまちは、高層ビルが多い。デニスのオフィスフロアも20階超えにあり、搬入用エレベーターで移動。これはまさに香港ならではの体験に違いない。

オフィスには、さまざまなプロトタイプと実験的な模型が陳列されている。素材やオブジェクト、空間をデザイン思考を持って自由に横断するデニス氏の仕事ぶりが、そのまま垣間見えるようだった。


そのあとはデニス氏の招待により、船上レストランへ!かつての香港には水上に居住する蛋民(タンミン)がいたが、それは戦後間もない昔の話。なかなか見ることができなくなったそれを彷彿とさせるような風貌の船に皆で乗り込んだ。次々と出される魚介料理を堪能しながら、飲酒と交流が進み、香港の夜は更けていった。

このような場を設けてくれたデニス氏に将来への意気込みも感じつつ、日本と香港のものづくりを通した親交に期待が高まった。

2025年以降は、今回のプロトタイプを実際に販売に繋げていくためのサポートを、日本建築材料協会は、引き続き行っていく予定だ。コロナ禍を経て、6年ぶりの開催となったDESIGN INSPIREとジャパンパビリオンは、大きな点を打つことができたように感じた。日本のものづくりの魅力、技術力を海外に向けて発信しつづけること、着実に点を打ち続けることは一つの答えでもありそうだ。

開催概要

DESIGN INSPIRE2024

開催日時: 2024年12月5日〜7日
開催場所: 香港コンベンション&エキシビションセンター
主催:香港貿易発展局
協力: (一社)日本建築材料協会近畿経済産業局
公式サイト:https://designinspire.hktdc.com/

出展企業:
中井産業株式会社
古松株式会社株式会社箔一
株式会社平田タイル
八紘電機株式会社
荒川技研工業株式会社
株式会社ウッドワークス
ユニオン株式会社

コラボ企画参加・香港在住デザイナー:

エドモンド・ウォン氏(EDMOND WONG STUDIO ディレクター)
CM Jao 氏(Oft Interiors Ltd. 共同創設者兼取締役)
エリック・トン氏(Eravolution Ltd. 取締役)
マックス・ラム氏(MAX LAM DESIGNS クリエイティブディレクター)
デニス・チャン氏(STUDIO RYTE 創設者)

取材・文
小倉ちあき
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