TEKTON

高齢者住宅リフォームの知見を、
世界で生かす

現場のニーズを拾った、リアルな商品開発を。

Free R rail(フリーRレール) / マツ六株式会社
「フリーRレール」

「フリーRレール」

超高齢社会・日本。海外と比較しても猛スピードで高齢化が進み、2020年の時点には高齢化率世界一となっている(※)。それを追うように、2050年には約5億人の国民が高齢者となる中国も、超高齢者大国となることが予測されている。日本だけでなく、すでに世界中が抱えている問題なのだ。世界に先がけて高齢化社会に突入している日本が、高齢者の住宅や介護施設の環境問題をどのように解決していくのか、世界中がその動向を注目している。※World Bank 調べ 2021

この「世界の課題」にいち早く取り組んだのが、2021年に創業100周年を迎えた、ビル・住宅建築関連資材の専門商社であるマツ六株式会社だ。商社でありながらファブレスメーカーとして、その商品は公的な品質基準はもとより、独自で設けた社内基準や社内検査施設も整え、品質を第一に取り組んでいる。安全性に対する取組みについては、PSアワード2020で最高賞である「経済産業大臣賞」も受賞している。

3代目代表取締役社長の松本 將さんは、高齢者向けのリフォーム商材が市場に全く欠けていることに気づき、「高齢者住宅リフォーム」という市場を日本で確立させるべく、常務取締役 開発本部長の佐久間 省三さんをプロジェクトチームリーダーに任命した。

マツ六株式会社 常務取締役 開発本部長の佐久間 省三さん

マツ六株式会社 常務取締役 開発本部長の佐久間 省三さん

通常のリフォームと、高齢者住宅リフォームは目的が全く異なる。老朽化した家屋・住宅設備の補修、間取りの変更や美しさを求めるものを前者とすれば、安全・安心を提供するものが後者だろう。高齢者の身体機能の支援や安全の確保、そして介助者の負担を軽減することが大きな目的となる。安全性を担保するためには、建築分野だけでなく、医療・福祉分野の知見が必須となる。
高齢者に安心を提供する住空間には、何が必要となるのか、調査に調査を重ねる日々。「1999年にプロジェクトチームを発足。まずは、カタログを作成しイメージを伝え、各地でセミナーを行い、施工会社や建築業者に向けて意識の共有から始めました」と、プロジェクトリーダーである、マツ六株式会社 常務取締役 開発本部長 佐久間 省三さんは話す。

プロジェクトの中で生まれたのが、施工プロ向け通販「ファーストリフォーム」だ。施工業者と共に高齢社会を支える画期的なサービスで、“先進的なリフォーム事業者”として、2015年に経済産業大臣賞を受けた。必要な商品を、必要な所へ、必要な分だけ届けられる通販システムで、24時間いつでも、1個からの小口配送を可能にしている。施工業者の利潤も担保されるシステムになっているというからすごい。

既存の商品ではなかなか対応できない。
それならば、自分たちで作ろうじゃないかという発想でした。

こうしてマツ六株式会社は、商社でありながら、メーカーとして商品開発を手がけはじめた。現在「ファーストリフォーム」で常時在庫しているアイテムは約6,000点、約2,500種類の手すり部材がラインナップされている。

現場のニーズは、新製品開発のもとになる。施工業者や販売店に集まる、商品への意見や苦情は開発部門が直接にヒアリングし、それをもとに解決策を模索していく。手で曲げられる屋外用手すり「Free R rail(フリーRレール)」も、こうして生まれた製品のひとつだ。日本の住宅の玄関アプローチは、短くて曲がった導線が多い上に段差が多い。さらに、高齢者に残された身体能力を活かすには、施工後の微調整も必要となる。都度、現場で寸法を測り、図面を引き工場へ依頼という手間と時間と費用の問題が、この開発で一機に解決することになった。

現場と状況に適した傾斜を、スピーディに実現できる

現場と状況に適した傾斜を、スピーディに実現できる

「曲げられる手すりの特許技術を持ったまま活用しきれていないメーカーさんがいたのです。お蔵入りになっていた特許技術を、改めて生かせる機会にもなりました」。手や足を使って簡単に曲げられるという画期的な形状で、階段の勾配、出隅、入隅など現場の状況に合わせて、自由自在に曲げてアレンジできる。手すり棒の太さも握りやすい直径34mm、熱くなく冷たくない耐候性樹脂被膜を使用することで、気温の変化が激しい屋外でも耐久性を維持する。思いやりが細部に行き届いている。

最大90度まで曲げることができる

最大90度まで曲げることができる

商品は、携わる人の人格と気概の表れだ。安全な住空間を作るために、作業療法士や理学療法士、建築士、メーカーなど立場の異なるもの同士が同じ目的に向かって力を合わせる。自社だけで完結せず、知見を集めて本来の目的に力を生かす。この『協調互敬』は、マツ六株式会社が大切にしているマインドだ。「事業に携わるパートナー全員と、win-winの関係を築きたいと考えています。商品開発から事業全般にわたって、サービスを提供する高齢者はもとより、その方を支える医療、介護者や、リフォームを行う施工業者全員にとって、安全でより効率よいサービスとなれるように取り組んでいきたい」と佐久間さんは話す。

取り付けやすく使いやすい、双方の立場に立った手すり

取り付けやすく使いやすい、双方の立場に立った手すり

高齢化問題は、住宅問題である。住宅事業に関わるものは、高齢者の自立を促し尊厳をもって安全に生活できる住空間を提供しなければならない。「協調互敬」の考え方と、「高齢者住宅リフォーム」の取り組み。高齢化という問題を抱える世界で、マツ六株式会社は、きっと世界で良き先輩になれるだろう。

WRITING
小倉 千明 / 編集・ライター。暮らし・地域・アートの領域で執筆。オフィスコモコモ代表。 https://lit.link/kurumuruchiiii
PHOTOGRAPH
HAGA MOMO / 写真家。舞台に立つ人や工場で働く人々の生き様、自然の美しさに鋭く迫る。
DESIGN
山中 崇寛 / Chillout Creative Space
DIRECTION
宮本 尚幸 / 日本建築材料協会デザイン委員会
PAGE TOP